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2023-02-23
認定介護福祉士は取得しても意味がない!?取得のメリットやかかる費用、勉強時間まで徹底解説
認定介護福祉士は、取得しても意味がないといわれますが本当でしょうか?確かに取得が即給与アップにつながることは少ないものの、キャリアアップ・スキルアップという視点に立てば役立つことは多々あります。
今回は「認定介護福祉士」の仕事と資格取得のメリット、介護福祉士との違いなどについて解説していきます。
認定介護福祉士とは?
認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位資格として設置された民間資格です。現在、介護職のキャリアパスの中では最上位資格で、介護福祉士のリーダー的存在として位置づけられています。
認定介護福祉士の主な役割は次の3つです。
①施設・事業所におけるサービスマネージャーとしての役割
・介護職による「サービス提供チーム」の教育・指導
・介護職をまとめ、リーダーとして介護業務や職場環境の仕組み・業務の進め方などを改善する介護サービスマネジメントの実行
②他職種との連携の核となる役割
・介護サービスを提供する際に医師・看護師・リハビリ職など他職種との連携や情報共有、協働などを中心になっておこなう
③地域の「介護力」向上を推進する役割
地域の施設・事業所・介護職・介護者の家族、ボランティアなどに助言・支援をおこない、地域の介護力の向上を図る
このように、認定介護福祉士には介護サービスの実践力に加え教育・指導・サービスマネジメント・コミュニケーションなど、さまざまなスキルが求められます。役割が多く責任も重いですが、それだけに大きなやりがいが得られる職業です。
認定介護福祉士資格は2015年12月に「一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構」が認証・認定を開始しました。歴史が浅く資格取得者はまだ少数ですが、高齢者のさらなる増加や介護人材のニーズの高まりを考えると、将来的に認定者数は増えていくと考えられるでしょう。
しかし認定介護福祉士資格について、「取得しても意味ない」という声があることをご存じでしょうか?続いて、その理由を確認していきます。
認定介護福祉士の資格取得が「意味ない」といわれる理由
結論からお伝えすると、認定介護福祉士資格が「意味ない」といわれる主な理由は、以下のとおりです。
取得に高い費用がかかる
認定介護福祉士として認定されるためには、「養成研修」Ⅰ類(13科目)・Ⅱ類(9科目)の全科目を受講し、修了する必要があります。全カリキュラムを取得した場合の費用目安は約60万円となっています。
さらに、資格取得に必要な養成研修を受けるための「受講要件」の厳しさも重なり、取得までの道のりは非常にハード。ますます「意味ない」といわれるようになってしまいました。
取得に長い時間がかかる
受講スケジュールは実施団体によって多少の差がありますが、養成研修(Ⅰ・Ⅱ類)の修了にかかる時間は約600時間と長期間にわたります。取得する場合はしっかりと学習スケジュールを立てる必要があるでしょう。
受講要件(資格)のハードルが高い
養成研修を受講するための要件が非常に厳しいことも、認定介護福祉士資格の取得者が伸び悩む要因となっています。
【受講要件】(一部抜粋)
・介護福祉士資格を持っている
・介護福祉士を取得後、5年以上の実務経験がある
・介護職の小チームのリーダーとしての実務経験がある など
なお、認定介護福祉士資格を取得するための条件や費用については、「4.認定介護福祉士資格を取得するには?」でより詳しくご紹介していますので、そちらもぜひご確認ください。
認定介護福祉士資格の取得には、厳しい受講要件を満たした上で、かなりの費用と労力が必要であることがわかります。
実際のところ、認定介護福祉士資格の取得が直接、収入アップにつながるケースは少ないというのが現実です。
「やっぱり認定介護福祉士は意味ない?」となりそうですが、実は認定介護福祉士の資格を取得すると、収入アップの可能性があります。
続いては収入面も含め、認定介護福祉士資格を取得するメリットについて紹介します。
認定介護福祉士資格取得の4つのメリット
「意味ない」という声がある認定介護福祉士資格ですが、もちろんメリットもあります!ここでは4つのメリットについてご紹介します。
1.総合的なスキルが身につく
認定介護福祉士には介護技術・マネジメント力・教育のスキル・他職種と連携するコミュニケーション力・周囲を引っ張っていくリーダーシップなど、非常に多くのスキルや能力が求められます。
これらの総合的なスキルが身につくとともに、自己の成長につながることは大きなメリットです。
2.キャリアアップにつながる
認定介護福祉士資格を取得すれば、将来的に管理職としてキャリアアップすることも可能です。認定介護福祉士は、介護の現場よりも、事務的な仕事やマネジメントに注力します。そのため、実際の現場で介護する機会は減るでしょう。
これらの仕事を担うことで、管理や運営について理解でき、管理職などへのキャリアアップにつながる可能性もあります。施設長や管理職などを目指して転職を考えている方にはメリットのある資格です。
3.転職の武器になる
十分なスキルや技術があるとみなされる認定介護福祉士は、リーダー・管理職など責任のある立場を任される可能性が高くなります。
そのため昇進や昇給などのチャンスも多く、さらに転職時にも有利に働くことが多いといえます。
4.将来的に給与アップの可能性がある
現状では、認定介護福祉士資格は手当支給の対象になっていない事業所も多くあります。しかし、資格取得によって担当業務の幅が広がり、基本給が優遇され、役職につき役職手当がプラスされるなどの可能性はあり得ます。
さらに、認定介護福祉士は将来、「介護職員等特定処遇改善加算」の基準になるのではないかといわれています。
介護職員等特定処遇改善加算とは、技能・経験のある、勤続年数の長い介護職員の処遇改善を目的としています。具体的には、従来の「介護職員処遇改善加算」に、さらに加算を上乗せするという取り組みです。
また、経験技能のある介護職員の指標として、認定介護福祉士の価値が上がる可能性は非常に高いと考えられます。取得によってリーダーを務められる介護職と認められれば、結果的に給与アップにつながるでしょう。
ここまで認定介護福祉士と資格取得について詳しくみてきました。認定介護福祉士に必要な条件とされているのが介護福祉士資格です。名称は似ていますが、具体的にはどう違うのか見ていきましょう。
認定介護福祉士と介護福祉士の違い
認定介護福祉士と介護福祉士には3つの明確な違いがあります。
1.国家資格と民間資格
認定介護福祉士は民間資格、介護福祉士は国家資格という点が大きな違いといえるでしょう。認定介護福祉士は養成研修を終了後、認定されれば取得できますが、介護福祉士は国家試験に合格しなければ取得できません。
2.担当する業務内容
介護福祉士は介護のプロフェッショナルとして、利用者の介護をメインに担当します。小チームのリーダーなど、先頭に立って業務を進めることもありますが、活躍のフィールドは「現場」と考えていいでしょう。
一方、認定介護福祉士は介護に関する知識・スキルは十分に備えているものの、現場での介護業務はほとんど担当しません。多数の介護チームの取りまとめやリーダーの教育、マネジメント、サービス管理など、業務が広範囲で多岐にわたることが特徴です。
3.取得に必要な実務経験の年数
認定介護福祉士資格を取得するには、介護福祉士として5年以上の実務経験が必要ですが、介護福祉士は3年以上の介護の実務経験と実務者研修を修了していれば受験可能です。
認定介護福祉士と介護福祉士の違いに続いて、実際に認定介護福祉士資格を取得するための条件や費用・期間・養成研修で学ぶ内容などについてご紹介します。
認定介護福祉士資格を取得するには?
認定介護福祉士資格を取得するには養成研修を受講し、定められたカリキュラムを修了しなければなりません。しかし受講するためにはいくつか満たすべき要件があります。まず養成研修の受講要件についてご説明します。
認定介護福祉士養成研修の受講要件
・介護福祉士の資格を持っている
・介護福祉士としての実務経験が5年以上ある
・介護職員を対象とした現任研修(※1)で、100時間以上の研修歴がある
・研修実施団体の課すレポート課題、または受講試験において、一定の水準の成績を収めている(※2)
・介護職の小チームのリーダーとしての実務経験がある
・居宅系および居住(施設)系サービスの両方で生活支援経験がある
(※1)現任研修:実施団体により「介護福祉士基本研修(介護福祉士資格取得後2年未満の方が対象)」、「ファーストステップ研修(小規模チームリーダーの養成を目的におこなわれる)」の受講が求められることがある
(※2)免除の場合あり
かなりハードルが高いと感じた方も多いのではないでしょうか。中には免除可能な条件もありますが、これらの条件をクリアした人のみ養成研修の受講が可能です。
養成研修のカリキュラム
研修内容はⅠ類とⅡ類に分かれています。Ⅰ類は医療・リハビリ・福祉用具と住環境・認知症・心理・社会的支援などについて学ぶカリキュラムです。
Ⅱ類はⅠ類で得た知識を土台に、介護の実践力や応用力・チーム運営・サービス管理、人材育成・マネジメントについて学びます。
養成研修の受講にかかる期間
Ⅰ類の受講にかかる時間はおよそ345時間、Ⅱ類はおよそ255時間が目安となっています。トータルでおよそ600時間となり、受講修了までに約1年半かかります。全てのカリキュラムを修了するには1年以上かかるため、介護職として勤務しながらの資格取得する場合はハードスケジュールになるでしょう。
養成研修の受講にかかる費用
受講にかかる費用も決して少なくありません。研修の実施団体によって異なりますが、目安としては60万円前後と高額です。しかし、一定の条件を満たせば受講費用が大幅に免除されたり、助成金制度を活用して負担を減らしたりすることも可能です。
また資格取得に対して、理解のある職場では、費用面で取得をサポートしてくれる場合もあります。認定介護福祉士の資格取得を考えている方は、一度、職場に相談してみてはいかがでしょうか。
「認定介護福祉士は意味ない」は誤解!キャリアアップ・スキルアップのためがんばろう
認定介護福祉士の業務内容と資格取得について解説しました。
認定介護福祉士の取得は、かなりの時間と費用がかかる・養成研修の受講要件が厳しい・直接的な待遇アップにはつながりにくいなどのデメリットがある一方、総合的なスキルアップが可能でキャリアの証明になり転職に有利などのメリットがあります。
介護職としてキャリアアップを目指している方や転職を考えている方、今後はリーダーとして現場から管理スキルを身につけたいという方は、取得を検討してみてはいかがでしょうか。