介護情報メディア ケアケア 介護士向けコラム 経営・業務改善 AI時代の介護資格、スマート介護士とは?試験概要と介護従事者が取得するメリットを解説

経営・業務改善

2025-07-04

AI時代の介護資格、スマート介護士とは?試験概要と介護従事者が取得するメリットを解説

介護現場では深刻な人手不足や、職員の身体的負担の増加といった課題が続いています。こうした背景を受け、国はテクノロジーを活用した「スマート介護」の導入を推進しています。
 
その一環として近年注目を集めているのが、ICTや介護ロボットを活用したケアを担う「スマート介護士」という新たな資格です。
 
本記事では、現場の介護従事者がスマート介護士の資格を取得することで得られる具体的なメリットや活用方法について、解説します。

「スマート介護士」とは?

スマート介護士とは、2019年に社会福祉法人善光会サンタフェ総合研究所によって制定された民間資格です。具体的には、介護ロボットやICTといった最新技術の導入や導入後の機器の設定、現場スタッフへの指導ができるスキルが習得できるため、キャリアアップを目指す介護従事者におすすめの資格といえるでしょう。

今後の介護現場では、ロボットや各種センサーの導入がさらに進むと考えられています。最新テクノロジーを活用できるスマート介護士のニーズは、ますます高まっていくといえるでしょう。

参考

内閣府|スマート介護士資格

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介護はICTでこんなに変わる!メリット・デメリットと成功事例

スマート介護士の資格が登場した背景とは?

スマート介護士の資格が登場した主な背景として、国内の高齢者人口の増加と、それに伴う介護現場の人手不足が挙げられます。今後、スマート介護士の育成が進み、資格取得者が増えれば、業務の効率化や職員の負担軽減、介護ケアの質の向上も期待できるでしょう。

また、センサーやICT機器などを活用した介護データを可視化や分析ができる「科学的介護」への移行が実現すれば、利用者さんの安全性の向上にもつながります。

こうした技術の活用は、人材が不足していても持続可能な介護を実現できると考えられているため、スマート介護士の資格はますます注目されていくでしょう。

介護職との両立はできる?スマート介護士の資格概要

介護職が日常業務をこなしながらスマート介護士資格の勉強をする際に、気になるのが資格の概要です。以下にBasic(初級)とExpert(中級)の詳細をまとめています。

試験の日程・第21回:2025年8月31日・第22回:2025年11月30日・第23回:2026年2月22日※決定分
試験内容・介護ロボット概論・介護基礎論・介護オペレーション基礎論・介護ロボット評価論・導入と運用の実践・介護業務支援システムの導入*Basic・Expert共通
受験資格・年齢や学歴、職歴の制限なし *過去に現役高校生の合格実績あり
受験方法・自宅パソコン+Zoomで受験 *機材環境確認→Web申込→受験票&接続先受領→試験日に入室し回答
受験者層・介護職員やリーダー層、異業種のDX担当など
試験実施中の環境・テキストの閲覧およびWeb検索・ChatGPTなどのAIツール活用が可能
・電卓などの計算機も用いるのも可能

※2025年6月10日時点の情報をもとに表を作成

試験内容は変更になる可能性があるため、公式ホームページで最新情報をご確認ください。合格率に関しては公式ホームページでは掲載されていないため、詳細を知りたい方は、運営事務局へお問い合わせをすることをおすすめします。

スマート介護 公式ホームページ

スマート介護士の資格の勉強は、独学でも可能です。公式テキストを用いながら、オンライン講座の動画を視聴できるため、他の介護系の資格と比べると学習のハードルは高くありません。介護職以外の方でも可能ですが、介護現場を経験がある方ほど資格を有効活用できるでしょう。

また、スマート介護士には、BasicとExpertの受験する前段階の入門の位置づけとして、Starter試験を設けています。こちらの資格は24時間365日いつでもオンラインで受けられ、試験料は無料です。さらに、デジタル庁と経済産業省の後援を受けている資格という点で信頼性が高いといって良いでしょう。

スマート介護士 Starter試験 公式ホームページ

スマート介護士の給料目安と待遇

スマート介護士の資格は民間資格のため、現状では介護系国家資格の補完的な位置づけです。そのため、介護従事者がスマート介護士の資格を取得してからすぐに給料が増えたり、資格手当が支給されたりするケースは少ないとされています。

なお、介護職の2024年度の平均年収は、常勤で約400万円、非常勤では約230万円でした。月収換算では、常勤で約33万円、非常勤で約19万円となります。

一方で、深刻な人手不足に直面する介護現場では、最新テクノロジーを適切に使いこなせる人材が求められています。以下のような具体的な成果と資格を提示できる場合は、昇進や転職の際のアピール材料として、スマート介護士の資格が役に立つでしょう。

・見守りセンサーを活用して夜間巡視を30%削減できた

・移動支援ロボットの導入で腰痛トラブルの職員をゼロにした

介護従事者がスマート介護士の資格を取得しても、資格手当としてすぐに給与には反映しないかもしれませんが、長い目で見れば将来的にキャリア形成と収入アップにつながる投資と考えられるでしょう。

参考

厚生労働省|令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要

スマート介護士が活躍するこれからの介護現場とは?

スマート介護士が活躍するこれからの介護現場には、主に次の3つの変化が訪れると考えられています。

ICT機器や介護ロボットが現場の「標準装備」に

厚生労働省は2025年度から「介護テクノロジー利用の重点分野」を9分野16項目に拡充し、見守りセンサーや移動支援ロボットなどの標準導入を推進しています。そのため、最新テクノロジーの活用が標準装備になる介護現場では、最新技術を施設運営につなげられるスマート介護士の需要がより一層高まるでしょう。

介護従事者の働き方の見直しが進む

テクノロジーの導入によって、介護士の働き方そのものが見直されていきます。例えば、見守りセンサーの導入により介護従事者による夜間の巡回や記録業務を減らせます。このように介護ロボットやICT機器を巧みに操作できるスマート介護士の存在は、働き方改革を進めるうえでのキーパーソンになるでしょう。

人手不足になってもケアの質が維持される

人手不足が深刻な介護現場でも、最新テクノロジーの導入が進んでいれば、介護ケアの質を維持・向上させることが可能です。

例えば、ICT機器や介護ロボットが見守りや移乗などの業務を行っている時間には、人にしかできない質の高いケアに専念しやすくなります。実際に、介護ロボットを導入したとある施設では、ケアの質が向上しただけでなく、職員の専門性も高まったという報告がされています。

今後も介護職員が不足すると見込まれているため、テクノロジーに強みを持つスマート介護士の資格を取得した介護従事者の活躍が期待できるでしょう。

介護従事者がスマート介護士の資格を取得する4つのメリット

介護従事者がスマート介護士を取得するメリットには、以下の4つがあります。ここでは詳細を紹介していきましょう。

ICT・介護ロボットへの活用スキルが身につく

介護従事者がスマート介護士の資格を取得する場合、最新テクノロジーを現場で活用できるスキルが身につくとされています。介護ロボットやICT機器の選定から設定方法、導入後の評価までを体系的に学べるのが特徴です。

スマート介護士の資格取得カリキュラムでは、具体的に以下のような内容を学習します。

・スマート介護士概論

・ケアテック基礎論

・科学的介護基礎論

・ケアテック導入の実践理論

・科学的介護の実践理論

単なる知識習得にとどまらず、現場で活用方法や効果の測定方法まで学べるといった実践的カリキュラムとなっているため、スマート介護士の資格を取得すれば、現場で一目置かれる存在になれるでしょう。

介護現場の業務効率化に貢献できる

スマート介護士を取得するメリットの1つとして、介護業務の改善や作業負担の軽減に貢献できる点が挙げられます。また、習得したノウハウを生かして、見守りや記録作業の自動化を進めれば、業務の効率がさらに高まり、介護現場の負担軽減につながります。

現場チームの「つなぎ役」として頼りにされる

スマート介護士の資格を取得すると、特にデジタル機器に苦手意識を持っている職員や、経験の浅い若手スタッフの、現場チームでの「つなぎ役」として頼りにされる存在となれるでしょう。

介護現場に最新テクノロジーを導入しても、使いこなせなければ意味がありません。介護従事者がスマート介護士の資格を持っておくことで、業務の効率化をリードする人材として重宝されるでしょう。

今後のキャリアの幅が広がる

スマート介護士の資格を取得していると、介護従事者としてのキャリアの選択肢が広がります。

例えば、最新テクノロジーの知見を活かして、業務の効率化に貢献すれば、リーダー職や管理職へのステップアップや後進の育成といったチャンスが訪れるでしょう。さらに、ITやAIに詳しい介護従事者として評価され、転職やキャリアチェンジが有利に働く可能性が見込まれます。

スマート介護士の取得で、AI時代の介護に備える確かな一歩を

最新テクノロジーの活用が当たり前になる時代において、スマート介護士の資格取得は、次世代の介護に欠かせないスキルを身につけるための有効な手段となります。

業務の効率化や質の高いケアの実現、スタッフへの教育など、職場全体の力を底上げする存在として重宝されるでしょう。高齢者の増加や介護人材の不足が深刻化するなか、最新技術を現場で活かせるスマート介護士の存在価値は今後ますます高まります。これからの介護を担う知見とスキルを身につけるために、介護従事者の方もスマート介護士の資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

コラム記事執筆者

朝比奈裕介
看護師ライター
看護師として総合病院や介護系の施設に勤務。現在は、Webライター・ディレクターとして、転職や医療、AI関連、マーケティングなどに関する記事の執筆・編集を行っている。