介護情報メディア ケアケア ケアラー向けコラム ヤングケアラー・若者ケアラー きょうだい児が抱える問題点とは?求められる支援策を解説

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2024-06-05

きょうだい児が抱える問題点とは?求められる支援策を解説

「きょうだい児ってなに?」「ヤングケアラーとは違うの?」このような、疑問を持つ方もいるでしょう。

 

きょうだい児には、特有の悩みや課題を抱えており、ヤングケアラー(ご家族の世話や家事をする18歳未満の子ども)同様に周囲の助けが必要です。

 

しかし、きょうだい児が抱える問題や支援策についてわからない方も多いでしょう。

 

本記事では、きょうだい児が抱える問題点や支援策について解説しています。私たちにもできる支援もあるため、ぜひ最後までご覧ください。

きょうだい児とは

きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹と育つ子どもを指します。障がいの種類は多く、身体・知的・精神的な障がいや発達障がいなど、さまざまです。

兄弟に障がいがある子どもがいることによって、きょうだい児特有の経験をします。

親は障がいのある子どもに注意が向けられる傾向があり、きょうだい児は親に愛されているという実感が湧かないこともあります。

家庭の中では我慢が多く、外出時も周囲の視線に気を使うことが多いため、きょうだい児は兄弟姉妹に対して、複雑な感情を抱えていることも少なくありません。

きょうだい児は、無意識のうちに家庭での役割や将来への不安を感じ、さまざまな感情と課題を抱えているため、周囲の理解と支援を求めています。

きょうだい児はなぜひらがなで表現するのか

きょうだいの漢字は一般的に「兄弟」と書きます。しかし、きょうだいには兄と弟の関係だけでなく、兄妹や姉弟・姉妹など、状況によって表記が異なります。

どのきょうだいを指しても差し支えない表現として「きょうだい」とひらがなが使われるようになりました。

きょうだい児もヤングケアラーになり得る

ヤングケアラーは、ご家族の介護や家事などを担う18歳未満の子どもを指し、責任や負担の重さにより、勉強や学校生活に影響を及ぼします。

ヤングケアラーは保護者が忙しい場合、幼い兄弟を世話するケースも見られます。きょうだい児は、幼い頃から障がいのある兄弟姉妹の面倒を見る役割を担うことも多くなるでしょう。そのため、きょうだい児もヤングケアラーに含まれます。

プレッシャーを感じやすい

きょうだい児は「自分がしっかりしなくてはいけない」というプレッシャーや、障がいのある兄弟姉妹の存在によって受ける家庭の影響など、きょうだい児特有の悩みを持っています。

ヤングケアラーときょうだい児は、ご家族を世話する点が共通しているものの、抱える課題や悩みは異なります。

きょうだい児の年齢や性別・兄弟姉妹の障がいの種類によって、直面する悩みは変化します。そのため、きょうだい児に対する適切な理解と支援が必要です。

きょうだい児に期待される役割と葛藤

多くのきょうだい児は、無意識のうちに障がいを持つ兄弟姉妹の補助や世話をする役割をしており、周囲からもその役割を期待されています。

また、保護者は障がいのある子どもに注意が向けられることが多いため、孤独感や疎外を感じやすい傾向です。

周囲の子どもや大人の間に立ち、思いを伝えたり理解を求めたりする役割もしており、障がい児にとってきょうだい児が精神的な支えになっていることもあります。

きょうだい児自身、強い責任感や義務感を持ち、ご家族の期待に応えようとしてしまいます。親の亡き後、障がいのある兄弟姉妹との関係など、きょうだい児は周囲が求める役割と自分らしさとの間で葛藤しているのです。

きょうだい児が抱える問題点

きょうだい児は、次のような問題点を抱えています。

・精神的な負担

・学業や進路への影響

・人間関係

・将来への漠然とした不安

それぞれ解説していきます。

精神的な負担

きょうだい児は、障がいのある子どもとともに生活する中で、孤独を感じています。家庭内では、障がいのある子どもに注目が集まるため、きょうだい児のことが後回しになるからです。

さらに、周囲から無意識のうちに「理解がある子」「我慢できる子」と認識されやすいため、自分の感情を抑え込む子どももいるでしょう。

障がいの兄弟姉妹が理由で遠出できないこともあり、クラスメイトと話が合わず、兄弟姉妹に対する嫉妬や怒りの感情を持つきょうだい児も見られます。

きょうだい児が経験する精神的負担は、子どもの発達や健康に関わり、自己肯定感が低いまま成長しているケースも多い傾向です。

学業・進路への影響

きょうだい児は家庭内で障がいがある兄弟姉妹へのケアに時間を使うため、自分自身の勉強時間が少なくなります。また、部活に参加できなくなるケースも見られます。

さらに、きょうだい児は兄弟姉妹の将来を考えて、自分の進学や就職の選択肢を制限し、望まない進路を選択することも珍しくありません。

「自分が助けてあげないといけない」という責任感から、自宅から近い就職先や進学先を選ぶなど、自分の夢や希望を後回しにしてしまうのです。

きょうだい児は、兄弟姉妹の影響を強く受けて、友人との関係が希薄になる場合もあります。また、「自分の好きなことをしてもいい」と言われても、自分がどのように生きてよいのか悩み続けているきょうだい児も少なくありません。

人間関係

中学生や高校生くらいになると、兄弟姉妹の障がいを理解していても葛藤するケースも多くあります。周囲の子どもは部活や遊びを楽しんでいるのに対し、「自分は違う」と孤独感や疎外感が生まれやすくなるのです。

また、同級生や周囲の大人から同情や偏見の目を向けられる場合もあります。悩みがあっても誰に相談すればよいのかわからないため、孤独を感じてしまうのです。

将来への漠然とした不安

きょうだい児は、障がいのある兄弟姉妹の将来が自分の人生にどれくらいの影響を与えるのか、常に考えている傾向です。

そのため、「自分のやりたいことをしていいのか」と、将来に対して漠然とした不安を抱えています。

親が高齢になったとき、両親の世話のみではなく「兄弟姉妹を世話しないといけないのか」という不安と「するべきだ」と考える肯定感で悩んでいるのです。

実際に、障がいのある兄弟姉妹の存在が原因で、交際相手の親から反対されて別れたり、出産することに抵抗を感じたりすることもあります。

自分の目標や恋愛・結婚など、人生の大きな決断にどれくらい影響するのか不安を感じる一方で、自分と離れて暮らしても障がいがある兄弟姉妹は幸せに生きられるのかと考え悩んでいるのです。

きょうだい児への支援策とは

きょうだい児への支援には障がい福祉サービスや地域のサポート事業があります。ここでは以下の3つを紹介します。

・障害福祉サービスの利用|市町村の相談窓口

・きょうだい児同士の交流|Sibkoto(シブコト)

・寄付としてサポート|伊賀市社会福祉協議会

障がいのある兄弟姉妹に支援をした上で、きょうだい児の居場所作りや当事者同士の交流なども大切です。

障害福祉サービスの利用:市町村の相談窓口

障害福祉サービスを利用するには、まずは居住地の市町村窓口に相談が必要です。ご家族以外の支援に抵抗感を持つ方もおられますが、障がいのある子どもをはじめ、ご家族も外部支援に慣れることも大切です。

障害福祉サービスは、自宅にヘルパーが訪問するサービスのほか、放課後支援・外出支援・ショートステイ・入所支援などさまざまです。18歳未満でも利用できるため、利用できる支援について相談してみてください。

サービスを受けるには、障害支援区分認定を受ける必要があります。申請からサービス利用まで2ヶ月程度かかる場合もあるため、早めに手続きしておくとよいでしょう。

きょうだい児同士の交流:Sibkoto(シブコト)

Sibkoto(シブコト)は、障がいがある兄弟姉妹を持つ「きょうだい児」を対象としたWEBサイトで、当事者が交流できる場を提供しています。

サイト内では、きょうだい児が共通の経験や課題について話し合い、相互支援や情報共有も可能です。

シブコトに集まれば、きょうだい児が自分だけと孤立していたことでも、理解し合える仲間を作れる可能性があります。

同じ立場の仲間や支援者の存在が、きょうだい児の抱える孤独感を軽減し、精神的なサポートが受けられるでしょう。

きょうだい児の支援は、全国で展開されています。オフラインイベントも定期的に開催され、Sibkotoでさまざまな相談ができれば、将来への不安も和らぐでしょう。

寄付としてサポート:伊賀市社会福祉協議会

きょうだい児への支援として、寄付も可能です。伊賀市社会福祉協議会では、生活困窮者や高齢者・障がい者に向けた寄付活動を実施しています。

寄付金は、知的障害者の金銭管理支援に使われており、毎月3,000円で知的障害者一人分の支援を提供可能です。

親が亡くなった後の障がい者支援が可能であれば、きょうだい児は安心して自分の将来を考えられるでしょう。

支援の内容によって寄付できる金額は異なり、毎月の寄付や1回限りの寄付・遺贈による寄付も受け付けています。

詳しくは、伊賀市社会福祉協議会のホームページをご覧ください。

まとめ:きょうだい児にはヤングケアラーとしてのケアも必要

きょうだい児は、障がいがある兄弟姉妹がいる子どもを指します。

きょうだい児は幼いうちから兄弟姉妹の世話をしており、周囲からの期待やプレッシャーに応えながら生活しています。

親の仕事が忙しい場合や一人親世帯では、きょうだい児が世話を担うケースも多いため、ヤングケアラーとしての支援も必要です。

きょうだい児は進路や結婚・出産など、自分の人生・将来に対して漠然とした不安を感じています。

きょうだい児には同じ境遇の仲間と悩みの共有や共感できる環境が必要です。自分だけの居場所を作ることで、精神的負担も軽減できるでしょう。そのためには、福祉やサポート事業の活用や周囲の理解と支援が必要です。

本記事を参考に、きょうだい児の支援について考えてみてください。

渡口将生

介護福祉士
介護支援専門員
認知症実践者研修終了
福祉住環境コーディネーター2級

介護福祉士として10年以上介護現場を経験。その後、介護資格取得のスクール講師・ケアマネジャー・管理者などを経験。現在は介護老人保健施設で支援相談員として勤務。介護の悩み相談ブログ運営中。NHKの介護番組に出演経験あり。現在は、介護相談を本業としながらライターとしても活動、記事の執筆や本の出版をしている。