資格・就職・転職
2023-03-31
作業療法士になるには国家試験合格が必須!試験内容や受験資格、学習内容まで丸わかり!
作業療法士とは厚生労働大臣が認定する国家資格であり、心身に障害を抱える方々の症状改善・社会復帰をサポートする専門職です。作業療法士になるには国家試験に合格しなければなりませんが、受験資格を得るために、まず厚生労働大臣が指定する養成施設で決められた単位を取得する必要があります。今回は作業療法士の国家試験の概要や合格率、養成学校で学ぶ内容などについて詳しくご紹介します。
作業療法士の資格を取得するには
作業療法士資格を取得するには、国家試験に合格しなければなりません。ここでは受験資格や作業療法士資格の取得までの流れについてご説明します。
作業療法士国家試験の受験資格
受験資格を得るには高校卒業後、文部科学大臣もしくは厚生労働大臣が指定した作業療法士養成施設で、3年または4年にわたって学び、カリキュラムを修了する必要があります。作業療法士養成施設には大学(4年)、短期大学(3年)、専門学校(3年または4年)などがあります。
【作業療法士資格を取得するまでの流れ】
また下記の場合、日本の作業療法士養成施設卒業者と同等の知識、技術をもっていると厚生労働大臣に認定されれば受験資格を得られます。
・外国で作業療法士免許に相当する免許を取得している
・外国の作業療法士養成施設を卒業している
作業療法士国家試験は年1回、2月下旬の日曜日に実施されます。試験会場は全国8都道府県に設置され、合格発表は3月下旬です。合格基準は総得点の60%以上の正解率で、合格率は毎年80%前後となっています。
ちなみに2022年に行われた第57回作業療法士国家試験では、合格基準が168点以上/275点となっています。
【作業療法士国家試験】
試験日 | 年1回(2月下旬) |
試験科目 | 筆記試験(重度視力障害者に対しては口述および実技試験) |
受検手数料 | 10,100円 |
試験会場 | 全国8都道府県で実施 |
合格発表 | 毎年3月下旬 |
合格率 | 毎年80%前後 |
作業療法士国家試験の出願方法
作業療法士国家試験の願書を取り寄せるには、次の3つの方法があります。
・各学校養成施設で入手する
・作業療法士国家試験運営本部事務所、または作業療法士国家試験運営臨時事務所宛に郵送で請求する
・厚生労働省医政局医事課試験免許室宛に郵送で請求する
郵送の場合は受験生の手元に届くまで一週間程度かかるため、日にちに余裕をもって請求しましょう。
願書が届いたら、下記の書類を揃えて「作業療法士国家試験運営本部事務所」宛に郵送します。
・受験願書
・写真(受験写真用台紙に貼付)
・返信用封筒(書留)
529円切手を貼付して提出する
・作業療法士養成施設の修業証明書もしくは修業見込証明書、または卒業証明書もしくは 卒業見込証明書
・受験手数料 10,100円
収入印紙を受験願書に貼って提出する
必要書類の締切日は厚生労働省HPなどで確認してください。
ここまで、作業療法士の国家試験詳細と資格取得までの流れなどをご紹介しました。続いては、2023年2月に行われた第58回作業療法士国家試験の詳細についてみていきましょう。
2023年「第58回作業療法士国家試験」の概要
2023年に行われた第58回作業療法士国家試験について、概要をご紹介します。
試験期日
2023年は筆記試験が2月19日(日)でした。
合格発表は3月23日(木)14:00に厚生労働省HPの「資格・試験情報」ページに掲載されました。
試験地
筆記試験は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、福岡県、沖縄県の全国8都道府県で、重度視力障害者に対しての口述試験および実技試験は東京都で行われました。
試験科目
筆記試験(一般問題・実地問題)と重度視力障碍者に対しての口述試験および実技試験に分かれています。
【筆記試験】
一般問題 | ・解剖学 ・生理学 ・運動学 ・病理学概論 ・臨床心理学 ・リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む) ・臨床医学大要(人間発達学を含む) ・作業療法 |
実地問題 (事例・症例から問われる問題) | ・運動学 ・臨床心理学 ・リハビリテーション医学 ・臨床医学大要(人間発達学を含む) ・作業療法 |
【口述試験および実技試験】
・運動学
・臨床心理学
・リハビリテーション医学
・臨床医学大要(人間発達学を含む)
・理学療法
試験時間・出題数
筆記試験の試験時間は午前・午後ともに160分ずつで計320分となっています。また出題数は午前・午後ともに100問ずつ、計200問で出題形式は選択式です。
【試験時間・出題数】
出題数 | 形式 | 時間 | |
---|---|---|---|
午前 | ●100問 ・専門分野(作業療法) 〔NO.1~No.50〕 ・専門基礎分野 ※人体の構造と機能・発達、保健医療福祉とリハビリテーション理念など 〔NO.51~NO.100〕 | マークシート 五肢択一 五肢択二 | 160分 |
午後 | 午前と同様 |
第58回作業療法士国家試験の概要をご紹介してきました。続いて、2022年度の第57回作業療法士国家試験についてもみていきましょう。
2022年度の作業療法士国家試験の合格率
2022年に実施された第57回の試験は受験者数5,723人、合格者は4,608人。合格率は80.5%でした。
第53回 | 第54回 | 第55回 | 第56回 | 第57回 | |
---|---|---|---|---|---|
受検者数 | 6,164 | 6,358 | 6,352 | 5,549 | 5,723 |
合格者数 | 4,700 | 4,531 | 5,548 | 4,510 | 4,608 |
合格率 | 76.2% | 71.3% | 87.3% | 81.3% | 80.5% |
作業療法士国家試験の概要や合格率の推移などについてみてきました。では国家試験に向けて、作業療法士の養成施設ではどのような勉強をするのでしょうか。次は国家試験受験の学習内容について詳しくご説明します。
作業療法士国家試験受験の学習内容
作業療法士養成施設では、人体の構造や病気の理解など医療従事者としての基礎知識を学ぶとともに、実習で作業療法士としての実践的な力を養います。非常に広範囲にわたる学びが必要なため、早くから国家試験を意識しながら勉強を進めることがおすすめです。
また今後の超高齢社会でより活躍するために、作業療法士に求められるスキル・知識のレベルはますます高くなりつつあります。そうした状況を踏まえ、厚生労働省は作業療法士養成施設のカリキュラムを大幅に変更し、2020年4月から新たに適用しました。例えば総単位数は従来の93単位から101単位以上に増え、最低履修時間数は3150時間以上となっています。
養成施設ではどんな内容を学ぶ?
国内には多数の作業療法士養成施設があり、学習の進め方は施設ごとに様々です。しかし厚生労働省によって必要単元数などの指針が定められているため、カリキュラムはどの養成施設でもある程度共通しています。
養成施設のカリキュラム
ここではカリキュラムの具体的な内容についてご紹介します。
基礎分野(14単位)
科学的思考の基盤や人間と生活、社会の理解などについて学びます。科学的・論理的思考力を育むと同時に、人間性を磨き、自由で主体的な判断と行動力も培います。また生命倫理や人間の尊厳を幅広く理解しながら、患者さんや利用者さんとのよりよい人間関係の構築を目的に、コミュニケーション論なども学びます。
専門基礎分野(30単位)
人体の構造と機能および心身の発達、疾病と傷害の成り立ちおよび回復過程の促進、保健医療福祉とリハビリテーションの理念などの知識を身につけます。
基礎医学や臨床医学に加え、高度化する医療ニーズに対応するため栄養学、臨床薬学、救急救命医学などの基礎も学びます。またリハビリテーションの理念や社会保障論、地域包括ケアシステムなど、作業療法士が果たすべき役割や他職種連携についても理解を深めます。
専門分野(57単位)
作業療法士の専門知識をさらに深めるため、基礎作業療法学、作業療法管理学、作業療法評価学、作業療法治療学、地域作業療法学などについて学びます。学習内容には系統的な作業療法を構築できる能力や医療保険制度・介護保険制度に関する理解、疾患別・障害別作業療法の適用に関する知識と技術の修得などが含まれます。
また専門分野では座学に加えて臨床実習も行い、社会的ニーズの多様化に対応した臨床的観察力・分析力を養います。治療計画立案力、実践力を身につけ、チームの一員としての責任と自覚も伸ばしていきます。
実際の患者さんを担当して身体機能・精神状態を確認・評価し、その結果から考えられる問題点を抽出し、治療プログラムを立案し、リハビリテーションを実施します。それに対して現役の作業療法士が評価を行い、注意点や改善点などをフィードバックします。
【実習の種類】
①見学実習
病院や施設などで実際の作業療法を見学します。作業療法の一部を体験することもあります。現場の作業療法に関する学びはもちろん、患者さんや他の医療・介護職との接遇・接し方なども学習できる機会です。
②評価実習
作業療法のプログラムを立てる実習です。実際の患者さんの心身や障害について確認し、課題を明らかにした後、作業療法の目標とその達成に向けた作業療法プランを考えます。担当する患者さんのカルテを見せてもらったり、医師・看護師にその患者さんの状況をヒアリングしたりする作業も含まれます。
③総合臨床実習
最終学年で取り組む実習で、自ら立てた作業療法プランを実践します。いわばこれまでの学びの集大成となる実習です。
実習に伴って、実習日誌や症例レポート(自分が担当した患者さんの評価や実践した内容などをまとめる)などの課題提出を求められる場合があります。
作業療法士国家試験の受験勉強として、養成施設では座学から実習まで非常に多くのカリキュラムを学んでいきます。非常に忙しい毎日になるため、学習スケジュールはしっかり立てて進めていきましょう。
作業療法士国家試験に合格するために、しっかり対策しよう!
作業療法士の国家試験について、概要や合格率、必要な受験資格や受験までのスケジュールなどについてご紹介しました。作業療法士になるためには、まず厚生労働省が管轄する養成施設に入学し、3年から4年にわたって必要な単位を取得しましょう。
患者さんの心身状態および障害の改善に貢献できる作業療法士は、大きなやりがいがあり今後の需要がさらに広がる見込みがある専門職です。また作業療法士の場合、国家試験をクリアすれば就職率はかなり高いことで知られています。作業療法士になってみたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考に挑戦してみてください。